液晶ライン用有軌道無人搬送車の設計

背景

主としてデジタルカメラ等に適用される液晶製品の製造に際して、ライン工程への製品搬送量増加に伴い、自動化ラインにおける特定トラックへの搬送車について、増車の必要性が生じた。このため場内自動化ラインに2台の増車が計画された。予算上の制約から1台は購入、もう1台は内作とした。

実施企業:C社

概要

無人搬送車の概要を図1に示す。

図1:無人搬送車の概要
図1:無人搬送車の概要

これは無人搬送車と呼ばれるもので、本体内部にガラス入りカセットを格納できる構造となっている。

製造装置とこのカセットとの受渡しができるように、上下、出戻り軸を持つフォークと、前後進駆動軸の計3軸のロボットである。直進と、コーナー旋回は床板下部に配置された下部ユニットがガイドする。直進駆動は主軸2輪によりに行われ、旋回は電磁クラッチによりコーナー外側のみの車輪駆動で行う。

人に対する安全性は前後の非常停止ボタン、超音波センサ、障害物接触バンパーにより確保される。

上部にはヘパフィルタを配置し、これによりカセットには上部からのクリーンエアが常に下向きに流れ、高いクリーン度が保たれている。

製造コスト

購入費の1/3以下

仕様

本体質量 315kg
可搬質量 15kg
走行速度 40m/分
全高 1700mm
全幅 750mm

機械図面構成

全体図 1枚
ASSY図 14枚
部品図(製作図) 168枚

制御系電装部品

200点強

給電方式

軌道面下に設けられたパンタグラフ式。トロリーにて1φ100Vを走行、停止中受電(電車と同じような給電方式)

安全装置

  • 超音波センサ
  • 非常停止スイッチ(前後2箇所)
  • 障害物接触バンパー(前後左右4本)
  • 内蔵スピーカ(前後2個)よりの警告音

設計時点での問題点

  1. 設計時点での材料費高騰への対処
  2. 必要機能の絞り込み
  3. 従来型の無人搬送車の保全性改善
  4. CADデータが無く、設計工程短縮の障害となる

解決策

  1. 4層構造の最下部フレームは従来、板厚10mmのアルミ溶接構造物であった。設計時点でアルミ素材の高騰を避けるため板厚3.2mmの軟鋼溶接構造物とした。
  2. 人の腰の高さに従来機はバンパーが前後2箇所にあったが、十数年間これに接触した事例が皆無であったためこれを廃止した。4コーナーに表示灯があったが警告音と重複するためこれも廃止とした。
  3. ハンガーによる吊り上げを止め、キャスターを4コーナーに配置するよう構造を変更した。床板下部のトロリー交換等の作業時間が1/3となった。
  4. 総て2次元CAD図面は作成した。立石一人で設計できるボリュームであったが、納期短縮のため約3割をもう1名の設計者に託した。

上記解決策は

  1. JIS D 6803 無人搬送車-設計通則
  2. JIS D 6802 無人搬送車-安全通則
に反するものではない。

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