無人搬送車トラックSUS化
背景
C社で1993年から稼動を開始した第1工場の自動搬送系は無人搬送車(Clean Transfer Vehicle)の走行するトラックが5本レイアウトされていた。無人搬送車は5トラックで合計11台が走行していた。
2009年現在で稼働開始より17年を経ていた。稼働開始後3年ほどでトラックの無人搬送車タイヤ軌道面に写真1のような条痕が発生し始めた。
実施企業:C社
概要
無人搬送車には駆動力を床板に伝える主軸車輪が左右に1個づつ配置されている。この他にこれらの車輪の前後に左右1個づつ従道輪と呼ばれる車重を支える車輪が全部で4個ある。無人搬送車が各トラックのコーナーを旋回する方式は自動車のような差動ギアによるものではなく、コーナー内側車輪への駆動トルクを電磁クラッチにより遮断しコーナー外側の車輪へのみ駆動トルクを伝える方式である。従ってコーナー旋回中は内側車輪は駆動を行わないアイドル状態である。
稼動開始当初よりトラックの床板の素材はアルミニウム(A5052Pに白アルマイト処理)板であり、表面硬度も低い。稼働開始後3年ほどでコーナーでのウレタンゴムタイヤとアルミ板との捩れによる擦れでアルミ板表面は写真1のように「えぐれて」しまいアルミ地が露出してしまっていた。あたかも馬車の車輪に依る轍のような条痕が刻まれていた。コーナーでタイヤに付着した黒色のアルミ粉がトラック直線部全域に亘って塗りこめられるような状況となっていた。コーナー板のえぐれてしまった深さは深い所では3mmほどあった。このような状況は無人搬送車の走行には殆ど問題は無いが、製品歩留まりの観点からは問題があった。それは製造部門の人員によるパーティクルの拡散である。無人搬送車トラックの直線部分の外側には各製造装置群が配置されておりそれらの点検のために製造人員がトラック内に立ち入ることがある。彼らはこの無人搬送車床板から発生したパーティクルを踏みそのまま他のラインへも立ち入る。この行為によりパーティクルは拡散してゆく。パーティクル拡散を防止するためトラック床板の改造が必要であった。
実施項目
- トラックASSY図調査
- 各トラックのコーナー部寸法採取
- 設計案考案
アルミ板は止めて部分的にステンレス板とする。
こうすることによって総てステンレス化したものとの重量は比較にならないほど軽量化される利点がある。
結局交換工事も容易に可能である。
t=2のSUS板を座ぐりしたアルミ地に接着剤で貼り付ける方式とした(直線部でt=1のところがある)。 - 設計
コーナー部は下部固定フレームへの締結の関係で思ったより煩雑な設計となった。 - 製作後3名ほどで4時間ほどライン停止して交換工事実施
改造後のコーナー部を写真2に示す。 - コーナー部
コーナー部は同様に全5箇所改修実施 - 直線部
直線部も同様のSUS板貼り付け方式にて2トラック実施。
改造設計製作費用
- コーナー部
500万円以下(9コーナー部) - 直線部
あるトラックで200万円以下
工程間トラックで100万円以下 - 総計
800万円以下
(搬送系設計施工メーカーに依頼すればおそらく何千万円か掛かったのではないか?見積もりを採ってはいないが…)
注意点
設計及び実施期間がかなり間延びしている。これは稼働状況の変更が頻繁に行われたためであり設計に難点があったわけではない。設計自体は機構が無い分簡単であった。