液晶ライン用搬送ロボットのレトロフィット
背景
主として携帯電話やデジタルカメラ等に適用される液晶製品の製造に際して、増産のための液晶製造新工場建設が計画された。予算圧縮のため、TFT工程のガラス搬送ロボットとして海外製中古品を自動化ライン用に数十台のレトロフィット(改造導入)を実行した。4軸垂直多関節型平行リンクアーム試作機にも関わらずチョコ停(ちょこっと停止する)はあるものの、2018年現在、概ね順調に17年間稼動中である。
実施企業:C社
概要
4軸垂直多関節型平行リンクアームロボットの概要を図1に示す。
一見、5軸のように見えるが平行リンクを巧みにアーム内部に内蔵しV、H軸駆動部はアーム根元のみに配置され、アーム支点にサーボモーター等の原動節はない。アーム根元のわずかなストロークの整数倍がハンド先のストロークに拡大されている。V軸で7倍、H軸で6倍。(H軸とV軸は独立に動作可能、ソフトで補間の必要なし)
アームを本体近くに引き戻せばこぢんまりと小さなスペースに収まり、アームを最大限に突き出せば600mmのストロークを確保できる特徴を持つ。先端ハンドは稼動領域内で常に水平が保てるよう設計されている。
仕様
タイプ | 垂直多関節型4軸ロボット | ||||||||||||||||||||
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繰り返し停止精度 | ±0.5mm | ||||||||||||||||||||
ストローク |
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最高速度 |
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可搬質量 | 2kg(ハンド部分) | ||||||||||||||||||||
本体質量(3軸) | 45kg | ||||||||||||||||||||
本体全体質量(4軸) | 約600kg | ||||||||||||||||||||
制御方式 | PTP | ||||||||||||||||||||
電源 | 220V,60Hz | ||||||||||||||||||||
CDA | 5kg/cm2 | ||||||||||||||||||||
バキューム | 工場ユーティリティー | ||||||||||||||||||||
排気 | 工場ユーティリティー | ||||||||||||||||||||
OS | B社オリジナル | ||||||||||||||||||||
コントロールボード類 | B社オリジナル | ||||||||||||||||||||
ドライバボード類 | B社オリジナル |
実施項目
- 分解調査
ワイヤーハーネス取り回し、機構、保守パーツ入手、OS使い勝手、アプリケーション検討 - 耐久テスト
連続400時間耐久テストにて機構、制御系の信頼性確認実施。使い物になることが解った。 - 不要構造物分解撤去
自動化用に必要なロボット本体3軸部とリニア軸を含むフレーム以外の構造物 - 各製造装置とのレイアウト決め
平行リンク機構解析をもとに稼動範囲を明確にし、TFT工程の半分ほどの中古ウェット装置郡17台に本ロボットを配置(中古ロボットは34台)。 - 安全カバー、ユーティリティ接合部等の設計と付加、ディスプレー、キーボード等の配置実行。
- 故障時対処法の確立
基本3軸部を短時間で交換する方策を案出。19台は予備機とした。 - 取り合い試験
各製造装置との現物や信号取り合い試験の実行。 - ライン設置
ロボット位置出し(位置出し容易化のために本体スライド治具設計)、ティーチング実行。 - ティーチング指導、保守指導、マニュアル作成指示の実行。
製造コスト
仮に新規設計ロボットならば1.6億円相当のものを1/6程度に抑えた。(1台約49万円)
(日本プラントメンテナンス協会よりTPM優秀賞・第一類受賞)